ハン・トンヒョン(韓東賢)
1968年東京生まれ。日本映画大学准教授(社会学)。専門はネイションとエスニシティ、マイノリティ・マジョリティの関係やアイデンティティ、差別の問題など。主なフィールドは在日コリアンのことを中心に日本の多文化状況。韓国エンタメにも関心。著書に『チマ・チョゴリ制服の民族誌(エスノグラフィ)』(双風舎,2006.電子版はPitch Communications,2015)、共著に『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』(2022,有斐閣)、『韓国映画・ドラマ──わたしたちのおしゃべりの記録 2014~2020』(2021,駒草出版)、『平成史【完全版】』(河出書房新社,2019)など。
「Yahoo!ニュース個人」でたまに発信しています(https://news.yahoo.co.jp/byline/hantonghyon)。
ポリティカル・コレクトネス(PC)の訳語は「政治的正しさ」や「社会的望ましさ」などさまざまだ。しかし、PCは炎上しないための表現ルールではないのにもかかわらず、PCにポジティブな人であっても、何がPCとして正しいのか、自分の表現は大丈夫だろうか(間違っているのではないだろうか)と疑心暗鬼になったり、試行錯誤している人も多いのではないだろうか。
今秋、出版された書籍『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』を参考に、PCを以下のように定義してみる。「PCとは多様な人々が生きる不均衡・不平等な社会の中で、個人が他者とコミュニケーションするためのルールであり、協働的に社会構造を変えていくための生きた方法である」と。では、PCはカルチャーという能動 / 受動、私的 / 公的なものが混じり合う表象の場を、どのようにして多声の方角へと開くのだろうか?
『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』の著者の一人である社会学者のハントンヒョン、フェミニズムにかかわる本の出版や書店活動を行うエトセトラブックス代表の松尾亜紀子、ジェンダー・セクシュアリティ、フェミニズムの視点から文化・文芸批評や文筆をおこなう鈴木みのり、そして聞き手に個人と個人の対話を出発点に社会構造の問題に目を向け、考え、語り合うメディア『me and you』の野村由芽、この4人の対話を通じて、ポリティカル・コレクトネスとカルチャーが拓く、わたしたちの自由の可能性を探る。
参考文献:『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』(清水晶子 / ハントンヒョン / 飯野由里子、有斐閣、2022)